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選手ストーリー

水沼宏太は、浦和の右サイドで何を待つのか。遠回りが作ったクロスの答え

父・水沼貴史、横浜F・マリノス、C大阪の天皇杯決勝点、ニューカッスル挑戦を経て浦和へ来た水沼宏太。右サイドでクロスの2秒前に何を見るのかを5ページで読む。

大会

J1百年構想リーグ
浦和レッズの赤と横浜FM、セレッソ大阪、ニューカッスルの色を重ね、水沼宏太の右サイドでの選択肢を示す選手ストーリー用ビジュアル
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遠回りの右足が、浦和に加わる

水沼宏太を見るとき、最初に追いたいのはクロスの軌道ではなく、その2秒前の視線だ。ボールが外へ出る前に、彼は相手SBの寄せ方、内側のMFが前を向ける角度、中央のFWの一歩目を見ている。右足を振る瞬間より前に、攻撃の出口はほぼ選ばれている。

浦和レッズは2026年6月22日、水沼がニューカッスル・ユナイテッド・ジェッツFCから完全移籍で加入すると発表した。浦和公式の体制表では背番号8、MF登録。新任の曺貴裁監督が率いるチームに、36歳の経験者が入る。ここだけを切り取ると、ベテラン補強という短い説明で終わってしまう。けれど水沼の記事の焦点は、年齢ではなく、その年齢までに増やしてきた判断の種類である。

水沼は横浜F・マリノスの育成からトップへ進み、栃木SC、サガン鳥栖、FC東京、セレッソ大阪を通り、横浜FMへ戻った。2025年1月21日に横浜FMがニューカッスルへの完全移籍を発表した時点では、1990年2月22日生まれの34歳だった。年齢だけを丸めると誤読を招く。正確には、34歳で初の海外挑戦に踏み出し、35歳になるシーズンをオーストラリアで戦った。

横浜FM公式の移籍発表には、2024シーズン終了時点のJ1通算395試合48得点、J2通算50試合7得点などの記録が並ぶ。国内で十分な履歴を持つ選手が、最後に肩書だけを売るのではなく、もう一度違うリーグへ出た。その選択が、水沼を過去の選手にしない。移動のたびに、相手の強度、味方の立ち位置、試合のテンポを測り直してきたからだ。

浦和加入コメントで本人は、この1年半をオーストラリアでプレーし、異なる文化で得た学びや経験を浦和の勝利に生かしたいと語った。埼玉スタジアムでファン・サポーターとともに闘うことへの期待も残している。さらにREDS START DAYでの新体制発表は、背番号8が新しいチームの中で紹介された場でもあった。加入は発表だけで終わらず、浦和の人たちと勝利へ向かう入口になった。

新加入・復帰選手会見で語られた土地への縁も、この移籍の厚みになっている。父・水沼貴史が浦和出身であり、家族の節目で浦和を何度も訪れていたという話は、情緒の飾りにとどまらない。水沼にとって浦和は、初めて聞くクラブ名ではなく、家族の記憶の中にあった土地である。そこへプロとして戻るからこそ、本人の言う「浦和に関わる人たちと勝利へ向かう」文脈が重くなる。

この移籍を浦和の配置に落とすなら、問いは「誰の時間を作るか」になる。金子拓郎が縦へ出る時間、マテウス サヴィオが内側で受け直す時間、サミュエル グスタフソンが前を向く時間、渡邊凌磨や宮本優太が後ろから支える時間、小森飛絢やオナイウ阿道が中央へ入る時間。水沼が外で幅を取れば、周囲の一歩目が変わる。一本のクロスを増やす補強ではなく、味方が前を向く角度を増やす補強として読む必要がある。

曺体制の浦和でそれが機能するなら、水沼の価値は「ベテランが落ち着かせる」という曖昧な言葉では終わらない。相手が寄せ切る前に入れる、寄せられたら戻す、逆側からボールが来たらファーへ入る。選択肢を一つに固定しないことが、周囲の走りを生かす。

会見で繰り返された勝利への言葉も、その役割と切り離せない。経験を語るより、味方を勝たせるための選択を次に示せるかが問われる。

父・水沼貴史、横浜FMの記憶、C大阪での決勝点、2022年の優勝、ニューカッスル挑戦。要素は多い。しかしこの記事の主軸は思い出の整理ではない。遠回りしたプロキャリアが、浦和の右側に何を渡すのか。次の浦和戦で見たいのは、クロスが上がった瞬間だけではない。ボールを受ける前に、水沼が誰を見ていたかである。

図解
水沼宏太のキャリア経路

横浜FMの育成から、栃木、鳥栖、FC東京、C大阪、横浜FM復帰、ニューカッスルを経て浦和へ向かう流れを示す。

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父の名前から離れ、栃木と鳥栖で自分を作る

水沼宏太の原風景には、横浜F・マリノスと父・水沼貴史がある。父は日産自動車、横浜マリノスで活躍した元日本代表で、横浜FM公式の「まりびと」でも親子が同じクラブの記憶を語っている。入口としては強い。だからこそ、そこで記事を止めない。宏太が作ったのは、父の続きではなく、プロになってから外へ出て獲得した自分の仕事である。

横浜FMのトップに上がった後、出場機会を求めて栃木SCへ期限付き移籍した。栃木SCの新加入会見で、水沼は試合に出られる環境と結果へのこだわりを語っている。若い選手にとって、毎週メンバーに入り、相手の強度に向き合う時間は、肩書よりもずっと大きい。練習で評価を待つだけではなく、試合後に身体を戻し、次の相手へ準備し、また走る。その反復が、プロとしての土台になった。この土台が、鳥栖で右足を武器にする準備にもなる。

この時期に身につくものは、ハイライトには残りにくい。遠征の移動、連戦後の回復、相手SBとの接触、守備へ戻る距離。そうした細部をこなして初めて、右足の精度は試合で使える武器になる。水沼のクロスは、練習場の技術だけでなく、毎週の試合に耐える準備と結びついている。

2010年12月4日の栃木SC対サガン鳥栖では、72分に水沼が栃木の2点目を決めた公式記録が残る。図は72分時点の両チームを置いたうえで、水沼が右側から得点へ入る距離を示す。大事なのは、横浜FMの若手だった選手が外のクラブで得点者として記録に残り、期限付き移籍を経験ではなく成果に変えたことだ。

次に、サガン鳥栖でJ1の右側を生きる。鳥栖の公式リリースには、2012年から2015年までのリーグ戦出場と得点が年ごとに残る。2015年の背番号は8だった。浦和で同じ番号を選ぶ今だけを見ると偶然の符号に見えるが、鳥栖の時間を挟むと、背番号8は自分の役割を持ってJ1を戦った記憶にもつながる。

鳥栖での水沼は、中央で一人だけ輝く選手ではなかった。豊田陽平という強いターゲットがいる前線に対して、どの高さでボールを入れるか、相手SBが寄る前に蹴るか、深く運んで戻すかを選ぶ。豊田の入り方を見れば、クロスはただの供給ではなく、味方の特長に合わせる判断になる。右から蹴るだけでなく、守備へ戻り、味方SBを助け、次の攻撃の位置へ戻る。こういう反復が、鳥栖での水沼を作った。

走って戻れるから、次に外へ出る自由も生まれる。

尹晶煥監督との関係も、後のC大阪へつながる。尹監督のチームでは、サイドの選手が華やかな一対一だけで評価されるわけではない。走る距離、戻る距離、クロスの質、味方への声、試合の締め方まで問われる。水沼は鳥栖からFC東京へ進み、その後C大阪で再び尹監督のもとに入る。移籍のたびにリセットされたのではなく、各地で得た役割を次のクラブへ持ち運んだ。

FC東京の2016シーズン編成表では、新加入MFとして水沼の名前が載る。C大阪の期限付き移籍発表は、横浜FMユースから各クラブを通ってきた経歴と、J1、J2、J3、カップ戦、ACL、天皇杯の出場記録をまとめていた。ここで見えるのは、ひとつのクラブで評価を待つ選手ではなく、自分の武器を場所ごとに調整してきた選手である。

父の名前は、記事の飾りではない。水沼がどこから来たかを示す根である。ただ、根だけを見ても、枝ぶりは分からない。栃木で試合に出て、鳥栖で豊田へ合わせる右足を磨き、FC東京で競争を受け、C大阪へ向かった。その順番があるから、次のページの天皇杯決勝点は偶然の一場面ではなくなる。浦和で見る水沼も同じだ。父の名だけで語る選手ではなく、外へ出た時間で身につけた判断を、赤い右側へ置く選手として読む。

図解
栃木で試合に入り、右足を武器にする原点(推定配置)

参照元に基づく配置です。栃木 4-4-2(72分時点)、鳥栖 4-4-2(72分時点)を示します。詳細は折りたたみで確認できます。

場面整理

公式記録で確認できる72分の水沼宏太得点を基準にした場面図。出場選手・背番号・時刻は公式記録確認、座標は編集部推定。

出場選手を表示

栃木SC

4-4-2(72分時点)

  • 背番号1 柴崎邦博
  • 背番号2 岡田佑樹
  • 背番号26 宇佐美宏和
  • 背番号5 落合正幸
  • 背番号24 那須川将大
  • 背番号38 水沼宏太
  • 背番号11 パウリーニョ
  • 背番号13 本橋卓巳
  • 背番号10 高木和正
  • 背番号8 廣瀬浩二
  • 背番号18 崔根植

サガン鳥栖

4-4-2(72分時点)

  • 背番号21 室拓哉
  • 背番号13 日高拓磨
  • 背番号2 木谷公亮
  • 背番号5 飯尾和也
  • 背番号3 磯崎敬太
  • 背番号25 早坂良太
  • 背番号15 丹羽竜平
  • 背番号6 藤田直之
  • 背番号8 衛藤裕
  • 背番号32 野田隆之介
  • 背番号9 豊田陽平

2010年12月4日の栃木SC 2-1 サガン鳥栖を72分時点の出場選手で置き、水沼宏太の得点へつながる右サイドの距離を示す。出場選手・背番号・時刻は公式記録確認、座標は編集部推定。

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C大阪で、埼スタの決勝点を決める

水沼宏太のキャリアで、浦和の記事としてどうしても外せない場面がある。2018年1月1日、第97回天皇杯決勝。会場は埼玉スタジアム2002。セレッソ大阪は横浜F・マリノスに2-1で勝ち、水沼は延長前半95分に決勝点を決めた。

水沼がC大阪へ来たのは2017年1月だった。クラブ公式の期限付き移籍発表には、尹晶煥監督をはじめ関係者への感謝と、自分の持つものをチームのプラスにしたいという本人コメントが載っている。C大阪はこの年、ルヴァンカップと天皇杯を獲る。水沼の一場面だけを切り取るのではなく、チームのタイトルへ自分の仕事を差し出した時間として見たい。

この試合は、古巣相手のゴールという言葉だけで片づけると軽くなる。C大阪は前半8分に横浜FMの伊藤翔に先制を許した。そこから65分、水沼のミドルシュートが流れを作り、山村和也が右足で同点にした。公式レポートは、水沼のシュートが山村の得点につながった場面を記録している。

決勝点は95分だった。山村が左サイドからクロスを上げる。ファーサイドへ走り込んだ水沼が、角度のない位置から頭で合わせた。セレッソ大阪公式もJFA公式も、この得点を延長前半の決勝点として残している。前半8分の失点、65分の同点、95分の逆転という時刻つきの流れが、試合の文脈をはっきりさせる。同点と決勝点の両方に関わった事実が、この章の軸になる。右サイドでクロスを入れる選手が、最後は逆側でクロスに入る選手になった。

ここに水沼らしさがある。蹴るだけではなく、走る。味方を使うだけではなく、自分も味方のクロスを受ける。山村との関係は、65分と95分で反転している。65分は水沼のシュートが山村の同点ゴールへつながり、95分は山村のクロスに水沼が飛び込んだ。決勝で二人の役割が行き来した。

清武弘嗣や山口蛍が中盤で試合を落ち着かせる中で、山村と水沼は最後の局面を動かした。

この反転は、右サイドの選手を読むうえで大きい。サイドの選手は、外で待つ時間が長いほど、最後に中へ入る判断が遅れやすい。けれど95分の水沼は、左からボールが上がる局面でファーへ入り直した。自分が蹴る場面ではない時にも、次の得点の場所を探している。浦和で水沼を見る時、その「蹴らない瞬間」の位置取りも観戦ポイントになる。

尹晶煥監督のもとで、C大阪はルヴァンカップに続くタイトルを獲り、2017シーズンを2冠で終えた。水沼自身も、声やプレーで表現すること、自分に与えられた使命を果たすことに触れている。華やかなプレーを人に任せるという言い方の奥には、自分が走り、声を出し、最後の場所へ入る覚悟がある。

このゴールは、浦和で見る時にも効いてくる。埼玉スタジアム2002で、横浜FMを相手に、C大阪の選手として勝負を決めた。その場所へ、今度は浦和の選手として戻る。もちろん、過去の決勝点がそのまま次のゴールを約束するわけではない。けれど、大きな試合でファーまで走り切った記憶は、右サイドの選手をクロスだけの選手にしない。

埼スタは浦和のホームであり、同時に水沼にとってタイトルの記憶が残る場所でもある。観客席の色は変わる。着るユニフォームも変わる。それでも、あの決勝で問われた「最後にどこへ入るか」という問いは変わらない。浦和の記事で天皇杯決勝を置く理由は、懐かしさではなく、次に追いたい動きの形がそこにあるからだ。

水沼を浦和で見るなら、クロスを上げる足だけでなく、クロスに入る身体も思い出したい。相手が外へ寄れば入れる。味方が左から運べばファーへ入る。特に、左から上がったボールへ入る一歩は、浦和でも見逃したくない。2018年元日の埼スタには、右足の前にある判断と、右足の後にある走りが一つのゴールとして残っている。

図解
65分と95分、山村と水沼の役割反転(推定配置)

参照元に基づく配置です。C大阪 4-4-2(95分時点)、横浜FM 4-2-3-1(95分時点)を示します。詳細は折りたたみで確認できます。

場面整理

JFA公式の試合結果で確認できる65分の山村和也得点、95分の水沼宏太得点を基準にした場面図。出場選手・背番号・時刻は公式記録確認、座標は編集部推定。

出場選手を表示

セレッソ大阪

4-4-2(95分時点)

  • 背番号21 キム・ジンヒョン
  • 背番号2 松田陸
  • 背番号15 木本恭生
  • 背番号22 マテイ・ヨニッチ
  • 背番号5 田中裕介
  • 背番号16 水沼宏太
  • 背番号6 ソウザ
  • 背番号10 山口蛍
  • 背番号46 清武弘嗣
  • 背番号11 リカルド・サントス
  • 背番号24 山村和也

横浜F・マリノス

4-2-3-1(95分時点)

  • 背番号21 飯倉大樹
  • 背番号27 松原健
  • 背番号22 中澤佑二
  • 背番号2 パク・ジョンス
  • 背番号23 下平匠
  • 背番号8 中町公祐
  • 背番号14 天野純
  • 背番号20 マルティノス
  • 背番号18 遠藤渓太
  • 背番号7 ウーゴ・ヴィエイラ
  • 背番号16 伊藤翔

2018年1月1日の天皇杯決勝、C大阪 2-1 横浜FMを95分時点の出場選手で置き、65分は水沼宏太のシュートから山村和也が同点、95分は山村のクロスに水沼が入った関係を示す。得点者・時刻はJFA公式記録確認、座標は編集部推定。

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横浜FMへ戻り、優勝の右サイドになる

2020年、水沼宏太は横浜F・マリノスへ戻った。育ったクラブへ帰るという言葉は美しいが、復帰後に求められるものは簡単ではない。父の名前も、育成出身の物語も、ピッチでは助けにならない。必要なのは、その時の横浜FMで前へ進むための仕事だった。毎日の競争で、試合の中の立ち位置を示す必要があった。

2019年12月の完全移籍加入発表で、水沼はセレッソ大阪から横浜FMへ戻った。クラブは2019年のJリーグチャンピオンであり、本人も再びトリコロールを着て戦えることへの思いを残している。復帰は感情の話だけではない。優勝した直後のチームへ入るということは、基準が高い集団に、過去の縁ではなくその時のプレーで入るということだった。

横浜FMの右サイドで、水沼は派手な一対一だけを売りにしなかった。外で幅を取り、相手SBを引き出す。内側の選手が前を向けるように待つ。クロスを入れる。失ったら戻る。セットプレーも蹴る。こうした小さな判断の積み重ねが、チームの攻撃を前へ押し出した。

2022年6月には、JリーグのKONAMI月間MVPにも選ばれた。Jリーグ選考委員会の総評では、右サイドの崩し、クロス、逆サイドからボールを引き出す動きが攻撃のアクセントになったと整理されている。評価の中心は、一本のクロスの美しさを越えていた。外で待つ、逆側で受ける、味方を前向きにするという複数の動きが、同じ選手の中にあることだった。

2022年、その仕事は結果へつながる。横浜FMはJ1優勝を果たし、水沼はJリーグベストイレブンに選ばれた。高丘陽平、岩田智輝、小池龍太、水沼宏太、エウベルが同じ受賞リストに入った。同年6月18日のG大阪戦でも、56分に西村、61分に水沼が決める連続得点があった。この六月の具体場面が、受賞理由に書かれた右サイドの崩しを試合の中へ引き戻してくれる。右サイドの水沼は、優勝チームの一部として評価された。

横浜FMから5人がベストイレブンに選ばれ、水沼はMFとして初受賞した。高丘、岩田、小池、エウベルと同じ並びに名前があることは、個人の表彰でありながら、チームの構造を映している。右で幅を取る選手が評価されたのは、横浜FMがその幅を勝ち方に変えたからである。その実感は、浦和で右サイドを見る時、外待ちを勝ち点へ変える物差しにもなる。

同じ年、JFAのEAFF E-1サッカー選手権2022の招集メンバーにも、水沼宏太の名前がある。横浜FM所属のMF/FWとして、宮市亮、岩田智輝、西村拓真、藤田譲瑠チマらと同じリストに入った。代表歴は、水沼に突然ついた飾りではない。Jリーグで右サイドの役割を積み上げた先に置かれた記録である。

ここで重要なのは、2022年を努力が報われた話だけにしないことだ。水沼の価値は、得点数や受賞だけでは説明し切れない。エウベルが左で相手を押し込み、小池龍太が右で関係を作り、高丘陽平や岩田智輝が後方から試合を支えた。その中で水沼は、味方の動きと相手の立ち位置を見ながら、右側の時間を選んだ。

浦和で求められるものも近い。右サイドで幅を取る選手は、ボールを受けてから考えるだけでは遅い。味方がどの足で受けるか、相手SBが前へ出るか、中央のFWがニアへ入るか。横浜FMで上がった水沼の基準は、そうした細部を読んで、チーム全体の前進へ変えるところにあった。

だから、2022年の水沼は過去のピークとして閉じない。優勝、ベストイレブン、日本代表という肩書は、右サイドでの判断が高い基準に届いた証拠である。浦和で彼を見る時、その基準がもう一度問われる。赤い右サイドで、水沼は味方の走りを待ち、相手の一歩を見て、次のボールを選ぶ。それが浦和での期待になる。

図解
2022年6月、水沼宏太が右サイドで評価される(推定配置)

参照元に基づく配置です。横浜FM 4-3-3(61分時点)、G大阪 4-4-2(61分時点)を示します。詳細は折りたたみで確認できます。

場面整理

Jリーグデータサイトの公式記録で確認できる56分の西村拓真得点、61分の水沼宏太得点を基準にした場面図。出場選手・背番号・時刻は公式記録確認、座標は編集部推定。

出場選手を表示

横浜F・マリノス

4-3-3(61分時点)

  • 背番号1 高丘陽平
  • 背番号27 松原健
  • 背番号4 畠中槙之輔
  • 背番号33 角田涼太朗
  • 背番号2 永戸勝也
  • 背番号6 渡辺皓太
  • 背番号24 岩田智輝
  • 背番号30 西村拓真
  • 背番号18 水沼宏太
  • 背番号9 レオ・セアラ
  • 背番号7 エウベル

ガンバ大阪

4-4-2(61分時点)

  • 背番号1 東口順昭
  • 背番号26 柳澤亘
  • 背番号5 三浦弦太
  • 背番号20 クォン・ギョンウォン
  • 背番号4 藤春廣輝
  • 背番号8 小野瀬康介
  • 背番号15 齊藤未月
  • 背番号23 ダワン
  • 背番号48 石毛秀樹
  • 背番号18 パトリック
  • 背番号37 山見大登

2022年6月18日のG大阪 1-2 横浜FMを61分時点の出場選手で置き、右外の水沼、内側の西村、中央のレオ・セアラ、逆側のエウベル、相手守備との距離を整理する。出場選手・背番号・時刻は公式記録確認、座標は編集部推定。

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ニューカッスルから浦和へ。右サイドで何を見るか

横浜FMで優勝を経験した後、水沼宏太は34歳で初の海外挑戦に踏み出した。横浜FMは2025年1月10日に海外クラブ移籍を前提とした準備のためチーム離脱を発表し、1月21日にニューカッスル・ジェッツへの完全移籍を公表している。本人は横浜FMでの5年間を特別な時間として振り返り、そのうえで新しいリーグへ向かった。

加入後最初の5試合で、水沼は3アシスト1得点を記録した。右足の質だけでなく、すぐにチームへ入っていく適応力も示した時間だった。ニューカッスルでの通算は37試合7得点。短い滞在ではなく、35歳になるシーズンをオーストラリアで戦い、結果と役割を積み上げた時間だった。

加入時のニューカッスル公式発表では、Rob Stanton監督が水沼を経験と質を持つ選手、前線で複数の役割を担える選手として迎えている。Lachie Rose、Clayton Taylor、Eli Adamsのような若い攻撃陣がいるチームで、水沼は自分が主役になるだけでなく、味方の判断を整える側にも回った。ここに、浦和で生きる「ベテラン」の中身がある。

この挑戦を、キャリア終盤の寄り道とは呼びたくない。言語も移動も相手の身体の使い方も違う環境で、また試合の中に自分の場所を作った。オーストラリア Cupでも貢献し、最終節のセントラルコースト戦では得点でクラブ初のPremiershipに関わった。浦和加入コメントの「異なる文化で得た学び」は、きれいな挨拶ではなく、実際に外へ出た選手の言葉として受け止めたい。

浦和公式の発表で、水沼はこの1年半をオーストラリアでプレーしたと語った。さらに、埼玉スタジアムでファン・サポーターとともに闘う期待も示している。REDS START DAYの新体制発表で背番号8が浦和の一員として紹介されたことも、この移籍をクラブ全体の新しい入口として見せた。父・水沼貴史が浦和出身であること、家族の節目で浦和を訪れていたという会見文脈も、ここで効いてくる。浦和は切り離された場所ではなく、家族の記憶とプロとしての現在地が重なる土地になった。

ただし、浦和で焦点になるのは縁だけではない。水沼がタッチライン際で幅を取ると、相手SBは外へ引っ張られる。そこで宮本優太が後ろから支え、サミュエル グスタフソンやマテウス サヴィオが内側で受け直し、小森飛絢やオナイウ阿道が中央へ入る。金子拓郎が縦へ出るなら、水沼は同じ外でも違う時間を作れる。単独のクロスではなく、周囲の判断を一拍楽にするプレーとして見る。その一拍が、浦和の詰まりをほどく余白になる。

観戦ポイントは五つある。ボールを受ける前に誰を見ているか。早いクロス、深い折り返し、内側への短いパスのどれを選ぶか。金子、サヴィオ、グスタフソン、宮本、小森、オナイウとの距離がどう変わるか。守備でどこまで戻り、SBを前へ出せるか。最後に、クロスが上がらなかった場面で誰が前を向けたか。この最後の問いが、水沼の効き方を一番よく映す。

図はニューカッスルの86分得点を、86分時点の両チーム配置に重ねた。68分に入った水沼が、相手の最終ライン、中央の味方、近い支援を同時に見る時間を読むための整理であり、浦和の先発予想ではない。浦和で再現されるなら、同じ形ではなく、同じ判断の順番として現れる。

水沼宏太は、過去を持ち込むために浦和へ来たのではない。父の名前、横浜FMの記憶、C大阪でのタイトル、2022年の頂点、ニューカッスルでの挑戦。その全部を通って、赤い右側へ次の判断を渡しに来た。次の浦和戦では、クロスの瞬間だけでなく、その2秒前に誰を見ていたかを追いたい。遠回りが作った答えは、ボールが足を離れる前に出る。

図解
ニューカッスルで見えた右外の3択(推定配置)

参照元に基づく配置です。ニューカッスル 4-3-3(86分時点)、セントラルコースト 4-5-1(86分時点)を示します。詳細は折りたたみで確認できます。

場面整理

ニューカッスル公式試合センターとFotMobのラインアップ表示で確認できる先発・交代、68分投入、86分の水沼宏太得点を基準にした場面図。得点とスコアは公式系情報、ラインアップと背番号はFotMob provider表示、座標は編集部推定。

出場選手を表示

ニューカッスル・ジェッツ

4-3-3(86分時点)

  • 背番号1 ジェームズ・デリアノフ
  • 背番号22 ジョエル・ベルトリッシオ
  • 背番号42 マックス・クーパー
  • 背番号33 マーク・ナッタ
  • 背番号23 ダニエル・ウィルメリング
  • 背番号8 ラチラン・ベイリス
  • 背番号14 マックス・バージェス
  • 背番号17 コスタンディノス・グロゾス
  • 背番号18 水沼宏太
  • 背番号43 ザビエル・ベルトンチェロ
  • 背番号10 ザック・クラフ

セントラルコースト・マリナーズ

4-5-1(86分時点)

  • 背番号30 アンドリュー・レッドメイン
  • 背番号15 ストーム・ルー
  • 背番号2 ジェームズ・ドナチー
  • 背番号3 ネイサン・ポール
  • 背番号5 ルーカス・マウラギス
  • 背番号23 オリ・ラヴェール
  • 背番号48 クリス・ドネル
  • 背番号10 ミゲル・ディピジオ
  • 背番号16 ハリソン・スティール
  • 背番号7 クリスチャン・テオハルス
  • 背番号37 ベイリー・ブラントマン

2026年4月25日のニューカッスル 4-0 セントラルコーストを86分時点の出場選手で置き、早いクロス、深い折り返し、内側への短いパスを整理する。出場選手・背番号・時刻は公式記録確認、座標は編集部推定。浦和の先発予想ではない。

参照元

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リーグ・大会公式14+
クラブ公式20+
データ・記録1+
メディア4+

記事情報

AI利用情報

サムネイル画像はAI生成によるイメージを編集して使用しています。

画像クレジット

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